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のあ299 “S”

御心配かけました。手術は無事終わりました。8時過ぎに帰ってきました。

9時56分のバスででかけました。病院に着いたのは10時ちょっとすぎ。
病室に行くとベッドの上のKazuは、もう手術衣姿でした。まもなく術前の点滴が始まりました。
6人部屋に5人いたのですが、きょうはそのうちの2人が退院。
登り棒から落ちて右肘をを骨折した9歳の男の子、足の上に荷物が落ちてきて足の甲を骨折したおじさん。おじさんの奥さんが、早く良くなりますようにと飾ってあった花かごをくれました。
手の指がうまく動かないので3度目の手術をしたおにいさんもあと2、3日で退院です。おおうKazu、牢名主状態。

2番目と言われていた順番が3番目、4時ごろになるかもと言われました。
絶食でおなかがぐるるると鳴いている身にはきついお言葉です。そうこうしているうちに12時。
あとのふたりは昼食です。「そこ閉めて」そうだよね、人が食べてるのをみてるのはつらいよね。

思ったより早く12時半ごろ、手術室に運ぶ小さいストレッチャーが来ました。
「○井君、早くなりそうなんで、ベッド移ってくれる?」右足1本で立って移ります。
短パンを脱ぎ、お尻に筋肉注射。麻酔がかかりやすくする薬です。点滴に麻酔を混ぜます。
「ふわっとしてくるから、目はつぶっててね」
行きましょう、と言われて一緒にエレベーターに乗ります。手術室は2F。
頑張ってね!というと右手をあげました。そのまま手術室へ入っていきました。それが1時。

本読んで、コーヒーを飲んで、食欲無いけどおむすびをのどにおしこんで…なかなか時間はたちません。家族待合室で待っていた人が何組か入れ替わっていきます。
2時少し前、Kenちゃん到着。午前中に予算のお仕事だけ片付けて帰ってきました。横に居てもらうだけで、緊張していた気持ちに少し余裕ができました。

手術室からKazuが出てきたのは4時でした。3時間経過。酸素マスクをした彼はまだこんこんと眠っています。顔を見ただけで、ほっとして涙がでそうになります。レントゲンを撮ってから上がるので、お部屋でお待ちくださいと言われました。

まったく腹の立つ話です。
3Fの待合室で並んで座っていると、やたらにこやかな白髪のおばさんが話しかけてきました。
今日は涼しくていいですねえ、から始まって、この病院はいい病院だの、高額納税者のサイトウさんの知り合いだの、サイトウさんは朝ボタンが取れると、普通の人は嫌がるのに出先で取れなくて良かったと喜ぶだの、自分は還暦過ぎて老眼が治ってめがねを使わずにすむようになったの、それは切花を7本もらってうちに来てよかったねえとその花に話しかけていたからだの…そういったことを、もっと要領悪く、あちこち飛びながら話すのです。
要するになんにでも感謝して前向きだと、金はたまるわ、老眼は治るわ…
耐えられなくなって、「私、部屋で待ってるわ」とKenちゃんに言って立ち上がりました。
人の息子が足を切り刻まれてるっていうのに、なんてノーテンキなおばはんなの!?

あとからKenちゃんに聞いたのですが、このおばはんが「高額納税者のサイトウさん」のなんやらのパンフレットをくれそうになったので断ったそうです。そうしたら最後に「ナムミョウホウレンゲキョウ」と言ったそうです。
くたばれ くそばばあ!!…失礼しました。地が出てしまった。
宗教の勧誘を病院のロビーでするんじゃない!

Kazuが部屋に戻ってきました。
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酸素マスク、点滴、背中に痛み止めの薬のチューブ。
声をかけると返事をしますが、まだもうろうとしているようです。
「○井君、ここさわってるのわかる?」足。首を横に振る。
「ここは?」おなか。ここもダメ。
前回より麻酔が醒めるのに時間がかかっています。

「マスク取って」…「苦しい」…「取って」
がまんして、と言って手をとったら指先が冷たいのです。
しばらくして寝入ったのか静かになりました。

処置の邪魔になるので、1Fに降りました。だれもいなくなった待合室で話をしました。
私は今、本当に視野がせまくなっています。
世の中にはもっと大変な思いをしている人が沢山います。先の見えない親の介護をしてる人、遺伝病で苦しんでいる私の兄を教師をしながら介護している兄嫁。
それに比べれば、100%治るわけはないにしろとりあえず機能は戻り、治療期間も3ヶ月と先が見えている私達はまだましです。
ただたまらないのは、この事態が人によって突然起こされたこと、そしてその原因となった人がこの事態をちゃんと受けとめていないことなのです。原因が自分にあればあきらめもつくのでしょうにね。
今回の再手術のことも、加害者は知らないし知らせる元気もありません。

部屋に戻るとちょうど回診が済んだところでした。
若いDr(執刀医)がX線写真を見せながら説明してくれました。(またでかい長いボルトが写っていました。)
後ろから開けて神経や血管をよけながら、骨を修復しました。前回は足の腫れがひどく、体位を変えて後ろから整復するのは無理だったが、今回は関節の高さも揃ったし、体重をかけやすくなるでしょう、と。
かなり大きくS字状に切りました、と。

S字でも直線でも傷は傷に変わりはありませんが、どうしてこんなに涙が出てしまうのでしょうね。左足の前は直線、フェアウエイまっすぐ右ドッグレッグで、後ろ側はSなわけです。
こんなに胸が痛いのに、加害者はなにも感じずに暮らしているのでしょうか。

まだ足に感覚は戻っていませんでしたが、KazuはKenちゃんが買ってきた「航空ファン」を喜びました。飛行機オタクの父と子はけっこう楽しそうにページをめくっていました。
また明日くるからね、というと握手をもとめてきました。2時にくるからね、ときっちり握りました。

明日からまた、リハビリの毎日が始まります。

by pleiad-subaru | 2005-09-28 23:49 | 本日のKazu